代理母契約書にはどんなことが書いてあるのという質問を読者さんからいただいたので、今日から複数回に分けて説明したいと思います。尚、弁護士によってフォーマットや内容に差異があるので、あくまでも参考程度にしてください。
まず最初に契約目的(Purpose)という項目があり、「IPが卵子ドナーから提供してもらった卵子から作った受精卵をGCに胚移植して、IPの子供をもうけるため」という内容が明記されています。
続けて定義規定(Definitions)という項目があって、契約書に登場する重要な言葉が定義づけられています。例えば、"Intended Parent"だと、「本契約に基づき生殖補助医療を通して得られた子(Child)の法律的親となる意思表明をした個人またはカップルで、未婚または未婚を問わない」などと仰々しく定義されており、その中に出てくる"Child"も、同じように定義規定の中で定義づけがされています。
こうすることで、重要な言葉の理解について契約当事者間の認識齟齬が生じないように意味内容統一ができ、且つ、繰り返し登場する長い固有名詞や文を簡略化して示すことによって、契約書を読みやすくするといった目的があります。代理母出産契約に限らず英文契約書で一般的に見られる形式ですので、海外のお仕事を経験された方には馴染みがあるかもしれません。
次に、契約推進(Implementation of the Agreement)なる項目があり、IP・GC双方が遂行すべき内容が書かれています。例えば、誰がどんな基準でIVFクリニックや産科を選択するのか、誰がどんな医療検査を受けるのか、移植周期・妊娠中にしてはいけないこと、誰がどのタイミングでどの費用を負担するのか、産後は誰がどんな責任を追うのかが細かく書かれています。代理母契約の肝とも言える部分ですから、当然ページ数が最も割かれていて、自分の場合は20ページ近くありました。
その後に機密保持(Confidentiality)についての言及があり、単に情報を漏らさないという内容ではなく、誰がどんな写真をどの媒体に載せていいのかまで明記されています。ソーシャルメディアが普及している時代ならではですね。
割かれているページ数は少ないものの、保険(Insurance)という項目もあって、出産までの健康保険についての費用負担や、それに付随する細かな決め事が書かれています。アメリカは日本と違って国民皆保険制度がないので、国民の1割近くが健康保険未加入者だと言われています。医療費が高い上に、加入する保険組合によってカバーされる内容が全く違うので、IP・GC双方にとって非常に重要になってきます。
お金の話に絡んで、経費精算(Reimbursements for Expenses)という項目もあり、経費に含まれるものとそうでないものが明確に記されています。基本的にIPがほとんど負担することになりますから、IPは特に注意をして確認したいところです。<続く>