アラフォーゲイの子育て奮闘記

代理母出産で子供を授かったゲイ男子の育児日記

余命宣告④

姉への告知を終えて病院から帰った夜、すぐに海外にいる姉の知り合いにメールをして、姉の余命が長くないこと、その姉にメッセージを書いて送ってほしいことをお願いしました。時差があるので明日の面会時間までには間に合わないかもしれませんが、少しでも多くの人が応援していることを姉に知ってほしかったのです。

 

普段は滅多に夢を見ず、夜中に途中で起きることのない自分ですが、その日は嫌な夢にうなされ、途中何度も起きてしまいました。海外の知り合いから早速姉宛にメッセージが届いているのを確認しては、安心してまた眠りに落ちたのを覚えています。

 

そして翌朝。その日は有休を取っていたわけではないので、姉の上司に連絡をしたり、妹に病院に持ってきてほしいものの指示を出したり、姉に見せる写真アルバムの編集をした後、病院へ移動するまで仕事をしていました。在宅勤務だからこそできたことで、コロナ前だったら、難しかったでしょうね。

 

妹と息子と一緒にお昼に病院へ移動して、病院脇の公園からウェブ会議に参加した後、姉の親友のTちゃんと母と合流して、いよいよ面会です。昨日と同じで、息子は病棟には入れないので、受付に母とふたりで待ってもらうことにしました。

 

20時間ぶりに見る姉は明らかに昨日よりも衰弱していました。時折体を動かしながら、うなされているようにも見えました。既に飲み下す力も衰えて誤飲のリスクがあるのか、通常の水ではなく、粘り気のある水がベッド脇に置いてありました。もう視力はほとんど残っておらず、Tちゃんの声だけはかろうじて認識したようでした。

 

「何か食べたいものはない?」と聞くと、「かき氷が食べたい」と弱々しく答える姉。急いで下のコンビニに買いに行きましたが、病室を出た途端涙が溢れます。病室近くでは姉に聞かれたらまずいと思い声を出すのを堪えていましたが、エレベーターに入った途端嗚咽してしまいました。居合わせた他の患者さんに「大丈夫?」と心配で声をかけられるほどでした。

 

病院のコンビニには、いわゆるかき氷は置いてなく探しながらイライラしたのを覚えています。それでもなんとかかき氷に近いアイスを見つけて、姉の病室に戻ります。小さな氷のような状態のアイスを姉の口にTちゃんや妹が運ぶと、姉は「おいしい、おいしい」と言ってくれました。誤飲のリスクがあるので、なるべく小さな塊を見つけては、ふたりが懸命に食べさせます。

 

「もう残された時間はない」そう感じた自分は、医師にだめもとで姉に息子の姿を見せてあげたいと懇願しました。医師から「もういいですよ」と言われた時には、自分の直感が正しいことを悟りました。

 

すぐに受付階におりて母と息子を呼びに行きます。途中病院のスタッフに息子が病棟に入るのを止められましたが、「先生の了承は得ています」と横目もふらずに病室へ向かう自分を見て、スタッフも切迫感が伝わったのだと思います。その後何も言われることはありませんでした。<続く>