姉の余命宣告についてはこちらをご覧ください。
姉が余命宣告を受けた翌日、Tちゃんを連れて姉と面会したこと、そしてその面会からわずか1時間で姉が天国へ逝ってしまったことは既に書きました。医者に言われた2,3週間よりも実際に残された姉の余命は短いという自分の直感が当たってしまったわけです。
患者が亡くなると、良くも悪くも病院のプロセスはきっちりしています。看護師が手短に死化粧を施すと、あっという間に病室から追い出され、霊安室に案内されます。そこも長居をできる場所ではないと暗に示され、早急に葬儀会社の手配をすることになります。
実はこの日妹に頼んで、姉の家からお祭りで着る法被を持ってきてもらいました。姉は毎年夏になると地元のお祭りに囃子メンバーとして参加していて、その時に着ていた法被です。ついでに姉が使っていた笛も持ってきてもらいました。何故妹にそう頼んだのかは覚えてないのですが、何となく必要になると感じたのです。その直感も残念ながら当たってしまいました。
死化粧をした姉に法被を着せて、笛を持たせると、姉は今にも祭囃子を囃しそうでした。でも笛を持つ手は既に冷たくなり始めていて、姉が2度と起きないということは明らかでした。姉の死化粧が終わると同時に病院のスタッフがストレッチャーを持ってきて、他の患者や家族に見られないよう、裏同線で地下の霊安室に移動しました。
霊安室には葬儀会社が常駐していて、火葬や葬儀の依頼をすることができたのですが、病院への不信感が募っていたので、別の会社から見積もりを取ることにしました。会社によってばらつきはあったものの、常駐している葬儀会社よりはどこも安くて、最安値のところはなんと3分の1の見積もりでした。
他社の検討していると分かった途端、病院の葬儀会社の対応が素っ気なくなり、いつ葬儀会社が遺体を引き取りに来るのか何度も聞かれました。こちらは家族を亡くして悲しんでいるというのに、葬儀会社を到着するまでの間なんとも居心地の悪い時間を過ごしました。
葬儀会社を決めてから霊柩車で遺体を引き取りに来るまで約2時間かかったでしょうかその間、息子は無邪気に姉の遺体の上に登ろうとしていました。病室で大泣きした母も妹もTちゃんも、霊安室に来る頃には憔悴しきった感じでした。自分は幸か不幸か葬儀屋の手配でバタバタしていたので、悲しみに浸る余裕はまだありませんでした。<続く>